ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社

Project
Story

03

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03

めざすのは、センサーによる安心安全な自動運転社会の実現と車内のエンタメ空間化。

自動運転の急速な進化を促しているセンシング技術。特に光を用いて対象までの距離を測定するLiDARにより、自動運転システムは車の周囲を非常に正確に把握することが可能となった。イメージセンサーで培った技術をベースに、LiDARのコアデバイスとなるSPADセンサーの開発で、この分野でもトップに立とうとしている。

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Member

亀田俊輔の写真

2005年入社
車載製品部門(デバイス開発)

亀田 俊輔

入社以来、半導体製品に求められる性能を製造フローに反映するデバイス開発業務を担当。CCDからCMOSへとイメージセンサーの進化とともにさまざまなタイプの製品を担ってきた。2018年からセンシングデバイスを担当。

吉武譲二の写真

2006年入社
車載製品部門(実装開発)

吉武 譲二

ウェーハから切り出された一つ一つのチップを外部環境から保護するとともに、他の回路と接続する端子を持つケースの役割を果たすのが半導体パッケージ。中途で入社して以来、その開発の多くにプロジェクトリーダーとして携わってきた。

小山田義実の写真

2006年入社
車載製品部門(製品技術)

小山田 義実

半導体製品が市場に出荷できる品質・特性を満たしているか、前工程が終わった段階で確認するための測定仕様作成や評価・解析などに携わってきた。入社当初からCMOSイメージセンサーを担当し、2017年から車載製品向けのセンサー開発に参画。

※2022年2月取材当時所属

Episode 01

自動運転の鍵となるセンシング技術

周囲の状況を認識し、自律的に走行する自動運転車の完全実用化が近づいている。その鍵となるデバイスが、光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間(時間差)を検出して距離を測定するSPAD距離センサーだ。イメージセンサーで培った技術的な資産が大きなアドバンテージを生み、後発ながら自動運転システムのメーカーへの供給計画を進め、自動運転技術をリードする自動車メーカーからもオファーが届いている。

吉武「ソニーが得意とする裏面照射型のSPAD距離センサーは、小型ながら高解像度を実現し、最大300mの距離を15cm間隔で、高精度かつ高速に測定が可能です」
亀田「感度など重要な特性について、顧客となる自動運転システムのメーカーの要求を十分に満たす製造プロセスが確立できました」
小山田「私たちとしては、優れたセンシングデバイスで未来の巨大市場に参入するだけではなく、市場を牽引していくつもりで取り組んでいます」

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Episode 02

すべてに優先される
安全性のために奮闘

SPAD距離センサーの開発当初は、民生用カメラ向けのイメージセンサーの開発では考えられなかった壁に突き当たっていた。故障や不具合が重大事故につながりかねない自動車という製品が求める、極限の品質基準である。

亀田「例えば、自動車は極寒の地でも、炎天下でも使用されます。この過酷な環境の中でもセンサーは稼働しなければなりません。そこで、−40度から125度までという広い温度環境での動作を保証する必要がありました」
吉武「従来のパッケージ材料では、本センサーでの車載信頼性基準を満たすことができないため、新規に材料検討からスタートしました」
小山田「環境面以外でも車載関連の品質規定は本当に厳しく、長期使用における信頼性も求められます。高負荷で長期間の連続使用テストを行い、製品として問題が出ないことを確認しています」
吉武「また、SPAD距離センサーで流れる電流の電位差は高く、顧客動作環境で回路がショートする懸念がありました。そこでパッケージ製品開発以前にテスト基板を作製し、何パターンもの検証を行うことで、あらゆる外部要因からでも影響されにくい設計を行うことができ、この問題をクリアしました」

吉武譲二の写真

Episode 03

納期の1年前倒しにも
一丸となって対処

求められる要件が厳しい中で、SPAD距離センサーの量産開発は一歩一歩進んでいった。ところが、そこに思いもよらぬ事態が発生した。量産品の出荷予定が1年も前倒しになったのである。

吉武「最近の自動運転技術の進化速度が早まり、顧客が市場投入を早めたのです。私たちにかかる負荷は相当なものになります。でも、私たちプロジェクトメンバーは一丸となって前向きに受け入れました。私たちこそライバルに先駆けて市場を牽引する製品を世界に送り出したかったからです」
亀田「各工程でどのような設定をすればこういう特性になるかなど、膨大な設定条件を約1年かけて、一つ一つ確認しながら進めていく予定でした。でも前倒しとなると、その確認時間が大きく削られることになります。そこで機械学習を使って、特性をある程度予測できるモデルをつくることで対処しました。これで確認する時間を大幅に短縮できました」
小山田「激戦の自動運転車市場に分け入っていくには、大胆な突破力が必要です」

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Episode 04

挑戦したことで得たものがたくさんある

ソニーは車載センサーでも高いシェアの獲得をめざす。プロジェクトメンバーの3名はビジネスの成功は大切だが、それだけがモチベーションではないと口を揃える。

小山田「自動運転が完全に実用化されれば、交通事故など悲惨な事故を無くすことができます。それがSPAD距離センサーの品質管理に関わる私の第一の目標です。加えて、世の中の常識を覆す技術を実現したいという想いがあります。スマートフォンが社会や暮らしをより豊かなものに変えたように、クルマ社会もより楽しく、豊かな方向に覆したいですね」
亀田「事故の無いクルマ社会の実現は車が世の中に生まれてからの悲願です。そこに貢献することの意義は大きい。また、このプロジェクトの延長上には、車での移動時間のエンターテインメント化があると考えています」
吉武「自動運転車には早く自分も乗ってみたいですね。この想いが現実になった頃、私たちが関わるSPAD距離センサーは大きな役割を果たしているはずです」

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