ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社

Project
Story

02

IS製品部門メンバーの写真

02

プロに選ばれるために、
選択したのは過酷な挑戦。

2021年夏に開催された世界的スポーツイベント。躍動する選手たちを撮影する大勢のプロカメラマンたち。その手に、ソニーのミラーレス一眼カメラが選ばれることが増えた。数年前までのスポーツ大会には無かった光景だ。撮影のプロたちに選ばれた要因の一つにあげられたのが、構造を見直して大幅な進化を引き出したイメージセンサーの搭載だった。

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Member

緒方徹の写真

2010年入社
IS製品部門(製品技術)

緒方 徹

イメージセンサーの品質と特性を保証する測定仕様を立ち上げるエキスパートとして今回のプロジェクトにアサインされた。正確な測定に向け、大きく変化した新しい回路の構成を深く理解するために、当社熊本テクノロジーセンターと神奈川県厚木市にあるソニーセミコンダクタソリューションズを3ヶ月間、何度も往復した。

野島研太の写真

2006年入社
IS製品部門(インテグレーション開発)

野島 研太

入社以来、LSIやCMOSイメージセンサーの開発においてプロセスインテグレーションを中心に担当。今回のプロジェクトでは今まで培ってきた知見を総動員する必要があった。それでもスキルと経験がまったく通用しない場面に数多く遭遇し、その克服でさらに成長できた。

森山卓の写真

2012年入社
IS製品部門(デバイス開発)

森山 卓

今回のプロジェクトでは、新しいイメージセンサーの集光デバイスの開発を担当。「意図したとおりに、光を画素にいかに多く取り込めるか」をテーマに開発を進めたが、開発初期に大きな問題が生じ、従来タイプを抜本的に見直した新しい構造に思い切ってチャレンジした。

※2022年2月取材当時所属

Episode 01

プロに評価されるフラッグシップモデルを

イメージセンサー市場でトップシェアを誇り、フルサイズの一眼カメラからコンパクトデジタルカメラまで展開するソニー。世界的スポーツイベントに向けて、世界最高レベルの競技を一瞬たりとも撮り逃さず、最高画質で残すことができる製品を提供することが、プロの撮影者たちに選ばれる最善の手段だと考えた。

森山「プロのスポーツカメラマンが求めている要件は数多くあります。今回は、まずは幕速や解像度の向上など、スポーツシーンを鮮明かつ正確に捉えたいという声に応えようとしました」
緒方「幕速とは、シャッター自体の開閉速度です。この速度を上げることによってフォーカルプレーン歪みと呼ばれる画像問題の発生を抑えられます。また、高画質を極限まで追求するために、50メガ以上の高解像度をめざしました」

緒方徹の写真

Episode 02

撮影者を満足させる
難度の高い構造に挑む

今までの技術の延長上で改良を繰り返すだけでは、他社製品との差は大きく広がらない。幕速や解像度だけではなく、プロのカメラマンたちから寄せられていた画像表現における課題を大幅にクリアしよう。そう考えたエンジニアたちは、35mmフルサイズのイメージセンサーの開発を、ゼロから抜本的に行うべきだと判断した。

森山「一つ改善できたとしても、そのトレードオフとして犠牲になる特性を無視するわけにはいきません。全方位で進化させる方向に向かいました」
野島「大幅な進化をめざしただけに、設計から上がってきたのは、今までにない極めて複雑な構造でした。それを実現する製造プロセスを立ち上げる立場としては、未知の領域に踏み込まなければならないことを覚悟しました。実際に開発が始まると、これまでの知見では想定できない課題が次々に出てきました。一つ解決すれば、また一つ別の課題が浮上するような課題の解決と対策に全力で取り組む毎日でした。製造プロセスの条件設定がデリケートで最適値が極端に狭く、ピンポイントを探すような苦労を重ねました」

野島研太の写真

Episode 03

従来方法との決別で見えてきた
ゴール

イメージセンサーの開発と設計はソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)で、製造はソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SCK)が担う、といった単純な役割分担ではない。オーバーラップする協業領域は広く、設計を新しくするSCKの提案がいくつも採用された。

森山「私は集光デバイスの開発を担当しましたが、初期段階で、従来の構造と決別する判断をしました。集光デバイスとは、光電変換するための光を意図した通りに捉えるための画素のセクションです。従来の構造では、特定の撮影条件でノイズが出てしまうため、根本的に構造を見直すことにしたのです。実際にいろんな構造を検討しました。シミュレーションで、ある程度絞り込み、製造プロセスを立ち上げ、出来上がったセンサーの評価を重ねていきました。ウェーハの状態にまで仕上げてもらうのは野島さんの所属するインテグレーション部署。そのウェーハを評価してもらうのは緒方さんの所属する製品技術部署です。部署の垣根を越えた連携で、何とか仕上げることができました」

森山卓の写真

Episode 04

挑戦したことで得たものがたくさんある

他の工程でも挑戦が重ねられ、多くの指標で従来製品を進化させた最新のミラーレス一眼カメラが完成。発売直後、SNSでは大きな反響があった。インフルエンサーの誰もが最高評価を下し、ターゲットとしていた世界的スポーツイベントでは、世界中から集まったカメラマンたちの構えたカメラの多くに、ソニーのロゴがあった。

緒方「今回のプロジェクトは難航を極めましたが、私たち自身も技術レベルが相当上がりました。私のチームが確立した測定仕様の新技術は、今後のイメージセンサーの開発に大きく貢献していくはずです」
森山「ひとことで言えば、ミラーレス一眼カメラの常識を塗り替えることができたと思います。新たな集光構造に挑戦して得た知見は、他のカメラにも転用されていくでしょう」
野島「SCKのイメージセンサーに関する技術全体を進化できたと感じています。今回開発した技術をベースとして、民生用カメラのみならず、産業機械、セキュリティ、車載など、様々な領域に繋がる、価値のある技術を数多く獲得できました」

IS製品部門メンバーの写真